小説

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ウィーンの月が奏でる音楽

第八章 幸運

1 東京にいる間にエレナには訪ねておきたい人がいた。田園調布の古くからの邸宅が軒を連ねるエリア。その一角にある一軒家。他の家と比べて大きくはないが手入れの行き届いたイギリス式庭園を持ち、主の慎ましやかだが品格のある性格を映したかのよ...
ウィーンの月が奏でる音楽

第七章 決戦

1 決戦の日はこの日と決まっていた。ウィーンを立つときに、エレナは澤野の家に日本に帰ることと結婚したことを伝えた。田島からの報告によれば、澤野の家は騒ぎになっていたらしい。といっても義理の娘を愛人にしようというのは、華子と忠利、幸利...
ウィーンの月が奏でる音楽

第六章 夢への道のり

1  ケビンに紹介されたワークショップは、音大の教授陣から直接指導をしてくれるというもので、夏休み期間を利用して国内外から学生が参加する。初日にクラス分けが行われて、合格すれば、教授陣から直接指導を受けられる。不合格だと聴講生という...
ウィーンの月が奏でる音楽

第五章 弟

1  次の週末、智己とエレナは、エレナの弟、留加を迎えに空港にいた。エレナは、到着ゲートから出てきた愛しい弟に駆け寄り、抱きしめた。15歳の留加は半年前に日本を出てから背も高くなって、大人びていた。「久しぶりね!留加。大きくなったわ...
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第四章 月~ルナ~

1  ウィーン旧市街の一等地に建つ5階建ての広いアパートメントであるが、智己とエレナの身の回りの世話を任されているアンナがほぼ一人で管理をしていて、他に智己のボディーガード兼運転手のレナードが住み込んでいるだけである。 智己自身は身...
ウィーンの月が奏でる音楽

第三章 甘い生活

 細長い格子窓のカーテンの隙間から差し込む光の眩しさでエレナは目を開けた。身体を動かそうとしたが、容易に動かない。背中の後ろから逞しい腕が伸びて身体に乗っていた。何とか身体を捩りさっきまでと反対の方を見れば、整った男の寝顔があった。長いま...
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第二章 契約

 クレアの実家が経営するホテルチェーンの一つであるダイアモンドホテル・ウィーンは、ウィーンの旧市街を囲むリンク通り沿いにあり、楽友協会やコンツェルトハウスにも歩いていける。ホテル内の、天井から金のシャンデリアが吊り下がるクラシカルなカフェ...
ウィーンの月が奏でる音楽

第一章 自由

  出会いはワルツにのせて ウィーンの夏は、湿気も少なく乾燥していて、過ごしやすい。もっとも日中は30度を超える日も多く、日差しは強い。だが、例年より早めの梅雨に入った東京から来た身には、抜けるような青空にカラッとした空気は心...
ウィーンの月が奏でる音楽

プロローグ

 羽田空港___ 国際線ターミナルのカウンターで、エレナは焦る気持ちを抑えようと努めつつ地上職員の女性に尋ねていた。カラカラに乾いた口からなんとか言葉を吐き出す。 「今直ぐヨーロッパに行きたいの。」とにかく一刻も早く日本を出なければ...
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